いろいろ買った飼い主

土日に有休を取った私へのお返しとばかりに、彼女が水曜日に有休を取ってくれた。こういうお返しは大歓迎だ。

隣の市に新しくできたイオンSCにVILLAGE VANGUARDが入っていると聞いたら、オタとして行かないわけにいかないんだ。まだオープンして間もないので土日は駐車場に入るだけで混雑するらしいと聞いていたから、水曜日に行けばいいと思っていたら、話を聞いた彼女が「私も行きたい!」と言った。つまり「自分ひとりで行くな」ということだ。

とにかく平日に彼女が休みを取ってくれるのをじっと待った。待っている間にVILLAGE VANGUARDのことを考えると行きたくなってしまうので、ひたすらに考えないようにしていた。意識して考えないようにするということは考えているということなので、正確には行きたいと思わないように別のことを考えていたということだろうと思う。自分の頭の中のことなのによくわからない。

そうこうして彼女と一緒にお出かけできる平日がやってきた。トワはお留守番だ。たまにはふたりでデート気分を味わうのだから、トワには我慢してもらうのだ。でも、イオンに到着して真っ先に目に飛び込んできたのがドッグランだったので、トワを置いてきたことをふたりでちょっと後悔した。お詫びに「ペット用どら焼き」を買おうとしたら売り切れだったので、パンを買った。飼い主たちはレストランで十穀米にとろろ汁をかけて食べた。私が豆腐だと思って手を出した物体がデザートで甘かった。最初から醤油がかかっているなんて変だと思ったんだ。あれは蜜だったんだ。それを逐一見ていた彼女に笑われて悔しかった。

VILLAGE VANGUARDでは、店内にいるということそのものが目的なんだと思う。買い物は二の次だ。なんてことを店員さんに知られるとまずいので、決してそんな素振りを見せてはいけない。あくまでも買い物をしに来たという意志を示すため、「今店内でかかっている曲はこれです!」と大々的にディスプレイされているCDを買った。そんな私に釣られた彼女が隣のCDを買った。結局ふたりでしっかりとお店の戦略にはまった。

ミスドリッチドーナツを全種類買おうと意気込んで店に入ったら全部売り切れだったので、がっかりしたのは彼女のほう。もう頭がすっかりミスドになってしまって離れないというので、イオンを出てから最寄りのミスド漁りをした。幸い近くの駅前で手に入れられてほっとしたのは私。

帰宅した彼女が、さっそく朝入れたコーヒーを温め直しつつ「北海道あずき」を頬張ると、完食してから「これは揚げあんパンね」と呟いた。どうやら予想を大きく外れた味だったらしい。少し可愛そうだったので、私が自分用に入れた紅茶をあげて「まあお飲み」と言ったら、とてもおいしそうに飲んでくれた。全く、こういう表情は狙ってるんじゃないかと思うくらいツボに嵌って嬉しい。